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糖尿病予備群といわれたら

2016年10月18日掲載2019年11月20日改定版掲載

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2型糖尿病になる前の段階を、「予備群」や「境界型」と呼びます。予備群でも心筋梗塞や脳梗塞などになりやすいといわれており、注意が必要です。ここでは、「糖尿病予備群」と「糖尿病の予防」について詳しくお話しします。

目次

糖尿病予備群・糖尿病の境界型ってなに?

糖尿病予備群といわれるのは、どのようなときでしょうか?

2型糖尿病の場合、ある日突然、血糖値が高くなるのではありません。多くの場合、ゆっくり、何年もかかって血糖値が高くなり、糖尿病に至ります。まだ糖尿病と診断されるほど血糖値が高くないけれども、正常よりは高くなってきた状態を「糖尿病の境界型」や、「糖尿病予備群」と呼びます。

血糖値の高さを確認する代表的な検査としては、空腹時血糖値75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)HbA1cの3つがあります(図1:正常型・境界型・糖尿病型の血糖値とHbA1cの関係)。
糖尿病の境界型は、HbA1c 6.5%未満で、1)空腹時血糖値が110~125mg/dL、2)75g経口ブドウ糖負荷後2時間の血糖値が140~199mg/dLのいずれかをみたしている方とされます。

図1:正常型・境界型・糖尿病型の血糖値とHbA1cの関係

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注1)空腹時血糖値が110~125mg/dLの方、HbA1cが6.0~6.4%の方は、「糖尿病の疑いが否定できない」グループとされ、75g OGTTの検査が推奨されています。
注2)空腹時血糖値が100~109mg/dLの方、HbA1cが5.6~5.9%の方は、「将来糖尿病を発症するリスクが高い」グループとされ、特に高血圧・脂質異常症・肥満などがある方は75g OGTTの検査をするのが望ましいとされています。

血糖値が境界型の方は、正常型の6~20倍も多く糖尿病を発症するといわれており、将来糖尿病を発症する確率が高い状態です。

糖尿病予備群は症状がないから、からだはなんともないの?

糖尿病予備群といわれたことのある方の中には、「まだ糖尿病になったわけじゃないから、今は食生活を改善したり、運動をしたりする必要はない」と思っている方がいるかもしれません。

糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので、そう考えるのは無理もありません。しかし、糖尿病の予備群の段階で、からだの中では変化がおきはじめています。

例えば、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが出にくくなったり、効きにくくなったりする変化は、糖尿病と診断されるずっと前の段階からあるといわれています(「インスリンが十分に働かない」ってどういうこと?)。糖尿病予備群といわれる状態から糖尿病に進むにつれて、インスリンの働きは徐々に弱まっていきます。

また、血糖値が高い状態が続くことで全身の血管にダメージを与えます。そのため、血管の老化である動脈硬化は糖尿病予備群の段階から生じており、心臓や脳などの血管の病気になりやすくなります。75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が高くなるタイプの境界型の方は正常型と比較すると、2.2倍も心血管疾患による死亡が多いといわれています。

図2:糖尿病境界型と動脈硬化

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さらに、糖尿病予備群は名前の通り糖尿病に進行しやすい状態であり、ひとたび糖尿病を発症し進行すると、神経症、網膜症、腎症などさまざまな合併症を引きおこします。
糖尿病の方の場合、糖尿病が無い方と比べて心臓や血管の病気の発症率が3.5倍とさらに上昇するという報告があります(糖尿病の慢性合併症ってなに?)。

図3:糖尿病境界型と大血管合併症リスク

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 境界型の方にとって、糖尿病を発症しないことが大血管合併症を予防する一番の方法です。

2型糖尿病の発症リスクを高める要因は?

2型糖尿病の発症リスクを高める因子は、大きく分けて2つあります。
ひとつは遺伝的因子であり、父親、母親から受け継いだ遺伝子の性質によって、血糖を下げるためのホルモンである「インスリン」が遺伝的に分泌しにくい方がいます(インスリン分泌低下)。
もうひとつは環境因子で、肥満や食べ過ぎ、運動不足などがこれにあたります。こうした生活習慣は、インスリンが十分に効果を発揮するのを妨げます(インスリン抵抗性)。
また、遺伝的因子でもインスリン抵抗性がおこることがあり、環境因子でも、インスリン分泌不足になることがあります。
遺伝的因子は持って生まれたものですから、残念ながら変えることはできません。しかし、環境因子はちょっとした心がけで変えることができます。

図4:2型糖尿病の2つの因子

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2型糖尿病の発症リスクを高める要因として、日本人の40~59歳の男女を10年間追跡した調査により、以下のことがわかりました。

糖尿病の発症リスクは、以下の要因で上がります。
年齢…1歳年を取るごとに男性・女性ともに2%上昇
肥満指数…BMIが1kg/m²増えるごとに、男性・女性とも17%上昇
糖尿病の家族歴…家族歴があると、男性で2.0倍、女性で2.7倍上昇
高血圧…高血圧があると、男性で1.3倍、女性で1.8倍上昇
喫煙…1日20本以上吸う方は吸わない方と比べて、男性で1.4倍、女性で3.0倍上昇
飲酒…1日1合以上呑む方は、飲まない方と比べて男性で1.3倍上昇

詳しく知りたい方は、『糖尿病のリスクを高める要因は?』『飲酒・肥満と糖尿病発症の関係は?』をご覧ください。

また、国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学予防研究部のメンバーが、将来の2型糖尿病発症を予測するツールを開発しました。ご興味のおありの方はご覧ください。

参考:
国際協力医学研究振興財団:「糖尿病のリスクを高める要因は?」リーフレット(外部リンク)
糖尿病リスク予測ツール

また、妊娠糖尿病や巨大児出産歴がある女性も、将来2型糖尿病になりやすいといわれています。睡眠時間や夜間のシフト制勤務、精神的ストレスやうつ病も糖尿病と関連しているといわれています。
では、2型糖尿病の発症を予防するにはどうしたらよいのでしょうか?

2型糖尿病にならないためにはどうしたらいいの?

生活習慣を見直しましょう

糖尿病予備群では、生活習慣の改善により糖尿病の発症のリスクを減らすことができます。

  • 食事は腹八分目でやめる
  • 野菜を積極的に摂取する
  • 散歩などの運動を少しずつでも始める
  • 体重を5~10%減らす
  • 禁煙する
  • 健康状態の確認のために健診を受ける
  • ストレスと上手につきあう

これらの取組みは、脳梗塞や心筋梗塞などの病気のリスクを減らすことにもつながります。

2糖尿病の発症を予防するための研究

糖尿病の予防のために、糖尿病をどうやったら予防できるか、世界各国でも考えられています。

具体的には、フィンランド(Finish Diabetes Prevention Study)、アメリカ(Diabetes Prevention Program)、中国(Da Qing Study)、インド(Indian Diabetes Prevention Program)、日本(Toranomon Study)などで行われています。
これらの結果では、食事・運動療法や減量をきちんと行った方は、行わなかった方と比べて2型糖尿病の発症リスクを29~67%下げることができるといわれており1~5)、発症を予防するために、日々の生活改善がとても重要であることがわかっています。

また、薬によって2型糖尿病の発症を予防する方法も考えられており、日本では心血管疾患のリスクが高く、75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が高いタイプの境界型の方に対して、ボグリボースというαグルコシダーゼ阻害薬が保険適用になっています(0.2mgのみ)。ボグリボースの糖尿病の発症予防効果は40.5%程度とされています6)。しかし、このような薬による2型糖尿病の発症予防効果は生活習慣の改善をしっかりするのと変わらない程度です。また、薬を飲んでいたとしても生活習慣を改善しない場合には、十分な効果が発揮されません。
医療費などコストの点や、薬を飲まなくてすむという点からも、まずは食事や運動習慣、体重などを見直し、健康で長生きできるように生活習慣を改善しましょう。食事や運動の工夫に関しては、2型糖尿病の方と同じです(糖尿病の食事のはなし糖尿病の運動のはなし)。

引用文献

1)Tuomilehto J et al. N Engl J Med. 2001, 344, 1343-1350
2)Knowler WC et al. N Engl J Med. 2002, 346, 393-403
3)Pan XR et al. Diabetes Care. 1997, 20, 537-544
4)Ramachandran A et al. Diabetologia. 2006, 49, 289-297
5)Kosaka K et al. Diabetes Res Clin Pract. 2005, 67, 152-162
6)Kawamori R et al., Lancet. 2009, 373, 1607-1614

参考文献

  • 日本糖尿病学会 編:糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂, 2019
  • 日本糖尿病学会 編著:糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第7版. 診断と治療社, 2017
  • Tominaga M et al., Diabetes Care. 1999, 22, 920-924
  • Waki K et al., Diabet Med. 2005, 22, 323-331

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